「誰もが活躍できるチャンスがある」
車いすラグビーの魅力
ラグビーワールドカップ2019で日本中が盛り上がっていた10月中旬、「車いすラグビーワールドチャレンジ2019」が東京体育館で開催されました。パラリンピック東京大会の前哨戦とも言われる本大会には、日本や英国をはじめとする世界ランキング上位8か国が参戦。パラ団体競技の来場者数過去最高記録となる約35,700名の観客は、迫力ある車いすのぶつかり合いに圧倒され、選手たちの華麗なパスに魅了されました。結果は、日本チームが銅メダルを獲得。3位決定戦で日本に敗れた英国チームは第4位で大会を終えました。
車いすラグビーの選手は、障害の重い0.5から軽い3.5まで、0.5刻みで7段階に持ち点が分かれます。コートに立つ4人の持ち点の合計が常に8点以下でないといけません。障害の軽い選手だけでチーム編成ができないようにして、障害の重い選手にもプレー機会を与えるスポーツです。
会場で英国 対 日本の試合を観戦した駐日英国大使館のスー・木下公使参事官が、大会の様子について振り返ります。
車いすラグビーの試合を観戦するのは初めてでしたか?
初めて車いすラグビーの試合を観戦しました。通常の楕円形のラグビーボールとは異なるバレーボールのような球を使い、ラグビーでは反則となる前方へのパスも見られたので、最初はなぜ「ラグビー」なのか疑問に思いました。しかし車いす同士がタックルのように激しく衝突するところを見て、すぐにラグビーの一種なのだと納得しました。試合中に選手が車いすごと転倒した時はとても驚きましたが、よくある光景だそうです。
車いすラグビーの魅力は何でしょう?
誰もが参加できるように設計されたチームスポーツであることです。車いすラグビーは、選手の障がいの程度によって持ち点や役割が異なります。例えば、障がいの軽い選手が、トライを狙う役割を果たしますが、このトライは、障がいの重い選手が「壁」となって相手守備陣を抑え、トライへの道を作るからこそ可能になるのです。また、障がいの重い選手が障がいの軽い選手の攻撃を阻止するのは勝敗を左右するビッグプレーとなります。このように誰もが活躍できる可能性のある平等なスポーツ、そして選手の多様性が強みになるスポーツだと感じました。
さらに、車いすラグビーは男女混合のスポーツです。英国チームは女性選手が活躍するインクルーシブなチームでした。会場では車いすに乗った幼い女の子たちが観戦していました。女性選手の活躍は、彼女たちに勇気を与えたことでしょう。
試合会場の様子はいかがでしたか?
私が観戦した試合は満席で、とても盛り上がっていました。また、スポンサー企業が選手を雇用したり、社員にボランティア活動を促したりするなど、積極的に社会貢献する姿が印象的でした。しかし、残念だと思った点もあります。ラグビーワールドカップの表彰式にはスポンサー企業のトップが登壇しますが、車いすラグビーワールドチャレンジの表彰式には企業トップの姿はありませんでした。パラスポーツに対する理解や関心の低さが一因かもしれないので、それを高めていくことが今後の課題だと思います。
車いすラグビーを観たことのない人にもおすすめしますか?
もちろんおすすめします。車いすでの激しいタックルをはじめとするアグレッシブなプレー、選手の卓越したスピード、技術、決断力はどれも魅力的でした。そして何より、車いすラグビーはとてもドラマティックなスポーツです。病気や事故を乗り越えて、コートに立つ選手たち。選手が自信を持ち、人生を変えるきっかけとなったスポーツの力、またそんな選手たちから、夢や勇気をもらった人々がたくさんいたと確信しています。
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