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英国のフィンテック最新事情 パート1
2019年9月第一週目、金融分野における日本と英国のさらなる関係構築を目的として開催された、日英交流年「UK in JAPAN 2019-20」のビジネスプログラムの一つ、「金融サービスの未来」(Future of Financial Services)。一週間を通して、日英の有識者が将来的な金融分野での日英協力の方向性について議論しました。
今回は「金融サービスの未来」期間中に開催された2つのイベントレポートをもとに、「フィンテックといえば英国なのか?日本との今後のパートナーシップの在り方とは?」について考えます。
パート1では駐日英国大使館で開催された「金融の未来-セミナー&レセプション」の模様をお送りします。
テクノロジーと金融の融合が進んでいる英国
セミナーでは英国フィンテック業界団体Innovate Financeのコミュニケーション&多様性部門責任者であるClare Black氏が基調講演を行いました。
Black氏は英国が革新的で起業家精神に富んでおり、テクノロジーと金融の融合が進んでいると話しました。また、「規制当局は新しいビジネスを支援すべく規制面を整備し、フィンテック企業やノンバンクに対してもインセンティブを与えています。今後、金融業界では再編が続くが、再編に国境はない。金融業界はグローバルに協力していかなければならない」と述べました。
100社以上の企業の技術を実証:英国の「レギュラトリー・サンドボックス」
英国の金融規制当局である金融行為監督機関(Financial Conduct Authority、以下FCA)においてイノベーション・ディレクターを務めるNick Cook氏は、「金融の未来:英国の規制政策と金融におけるイノベーション」というテーマでプレゼンテーションしました。
「英国の先進的な政策例として、規制の枠にとらわれず、開発中の商品・サービスの実証実験が行える制度、レギュラトリー・サンドボックス「規制の砂場」があります。英国では、世界に先駆けて2016年5月から導入され、これまでにおよそ100社以上が仮想通貨、生体認証、P2Pレンディング、オープンバンキングなど、革新的な技術をテストしました。
規制当局も変わっていかなければならず、組織のDNAを活かしつつ、失敗を受け入れながらリスクをとることが必要」と述べました。
イベントの後半では、4名が登壇してパネルディスカッションが行われました。
登壇者:
Nick Cook氏:FCAイノベーション・ディレクター
Clare Black氏:Innovate Financeコミュニケーション&多様性部門責任者
Max Oates氏:スタンダードチャータード銀行日本支店CIO
有友圭一氏:FinCity.Tokyo(一般社団法人東京国際金融機構※)専務理事
※FinCity.Tokyoは東京の金融市場としての魅力を高め、東京を世界トップクラスの国際金融都市とすることを目的とし、2019年4月1日に発足しました。有友氏自身、世界各国の金融機関に関与され、現在はフィンテック企業を経営されています。
英国のフィンテック産業が成功した理由
まず、英国のフィンテック産業がなぜここまで成長したのかについて、議論が行われました。
「英国でフィンテック産業が成功したのは、法人部門でも個人部門でもフィンテックへの需要が高く、利用者に受け入れられたからであり、それによってセクターが成長し、成熟しているからである」とBlack氏は述べました。
Cook氏も、「英国におけるフィンテックへの需要が非常に旺盛であるために、複数のフィンテッククラスターが育った」と話します。規制当局としては、今後、どのような人材が必要になるのか、そのための出入国管理など、政府としてどのように対応していくのかが課題になる、とも語りました。
また、競争について政府はどの程度介入すべきかについてBlack氏は、「英国では政府が積極的にフィンテックをサポートしています。政府はクラスターに介入するのではなく、一緒に仕事ができるようにサポートしています」と述べました。
Cook氏は、「英国では十分な時間があるならば、市場経済に任せるが、急速に進めなければならない場合は進化を促すように介入することもある」と話しました。
未来への課題:最先端技術と古いビジネス環境の融合
Oates氏は「金融業界が単独で近代的な、顧客重視のシステム・インターフェイスに移行するのは困難。多くの国で銀行とフィンテック企業がパートナーシップを組んでデジタルバンキングを行っているため、テクノロジーを活用し、内外へ門戸を開放していくべきだ」と主張しました。
Cook氏によれば、FCAは数年かけてクラウドに移行するとのことで、このシステム移行は厳しいかもしれないが、新しい技術によって様々な問題が改善できるだろうと考えています。
規制には、人工知能(AI)を用いてリアルタイム・モニタリングが必要となります。これまで金融取引のモニタリングによる規制は、事後にしかできませんでした。今後の規制当局の課題としては人材確保が挙げられています。FCAではこれまでプログラマーやデータアナリストを積極的に採用していませんでしたが、現在、この分野の採用においてIT企業と争奪戦になっています。
最後に、Black氏は今後金融分野において、サイバー攻撃から守るサイバーレジリエンスをどう保証するのか、ということが大きな課題となると述べました。
パート2では、9月5日に行われたFinTech Nightの模様をお伝えします。お楽しみに!
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