英国のAIが強い2つの理由
<この記事は2018年8月に英国大使館「Innovation is GREAT」キャンペーンブログに掲載されたものです>
英国には389社の人工知能(AI)企業が存在します。AI開発が盛んとして知られている米国には約1200社、欧州全体には879社のAI企業があり、このうちの389社が英国発です。実は欧州の都市の中でAI企業が一番多いのが英国のロンドンであることをみなさんはご存知でしたか?
英国大使館は2017年度、英国のAIの最新状況と日英コラボレーションの機会に関する調査を英国のテクノロジー・コンサルティング企業であるケンブリッジ・コンサルタンツ社に委託しました。同調査では、英国のAIエコシステムの発展と成功の裏には二つの要素があるとしています。
英国のAI研究が強い理由その1:資金
AI研究には資金と時間が必要です。機械学習やディープラーニングでは、膨大なデータの蓄積が必要で、それらを使って学習させるために有効なアルゴリズムを開発し、テストしなければなりません。ベンチャー企業には人や技術があっても、資金はなかなかありません。
英国のAIの強みは同分野への官民による資金提供にあります。AI分野の発展に向けられた資金に関して、英国は、米国と中国に次いで第3位にいます。また、英国のテクノロジー系のベンチャー企業は、2017年には約30億ポンド(約4500億円)の収益を得ており、このうちの4.9億ポンド(約585億円)はAI分野のベンチャー企業によるものでした。さらに、2018年4月に英国政府は、世界のテクノロジー企業と共同で、英国のAI開発に10億ポンド(約1500億円)を投資し支援することを発表しました。これにはMicrosoftやHewlett Packard Company、IBM、Pfizerなどの米国企業の出資も含まれています。
英国のAI研究が強い理由その2:人材
英国の大学ではAI分野における教育環境が整っており、最先端の研究を行っているため、世界的に有名なAI研究者を数多く輩出しています。なかでも、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)やケンブリッジ大学はAIでは有名です。「Journal of Machine Learning Research」というマシンラーニングの論文誌においては、英国は米国に次いで2番目に多くの論文が発行されている国となります。英国には修士や博士号を取得した研究者が多いだけではなく、AIに必要な機械学習や数学、コンピュータサイエンスなどの幅広い分野における研究者が多いため、これからの新しいAIにも柔軟に対応できます。
資金面でのサポートがあり、技術的に優れた人材や教育環境が揃っている英国のAIのエコシステムには、多くのグローバル企業が投資をしています。たとえば、2017年にはアマゾンがケンブリッジに「Alexa Development Centre」を設置しました。ここでは、同社のAIアシスタントである「Alexa」やドローンによる配達技術の開発が行われています。アマゾンは2010年以降、英国に対して6.4億ポンド(約935億円)を投資しており、この開発拠点の設置はその一部です。
機械学習の論文誌「Journal of Machine Learning Research」における各国の論文発行数
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